なぜ遺言書が必要なのか?

前述の通り、遺産を分割するには、相続人全員が遺産分割協議書に署名と実印の押印をする必要があります。そのため、例えば

■相続人全員に署名と実印を押してもらうのが難しい
(例)疎遠な相続人がいる、相続人と仲が悪いなど

■相続人全員に署名と実印を押してもらうのに時間がかかる
(例)相続人の数が多い、相続人が海外にいるなど

■相続人の中に署名、実印の押印ができない人がいる
(例)相続人の中に認知症の方や失踪者がいるなど

以上のような場合、遺産分割協議書の作成が遅れ、亡くなった方の財産を、その間ずっと使うことができなくなってしまいます。
しかし、遺言書を作成しておけば、このような問題を解決することができます。

遺言書を作成すると何ができるのか?

(1)誰に財産を渡すか自由に決められる

(2)渡す財産の割合を自由に決められる

(3)遺言執行者を決められる

→遺産分割協議書が作成できない場合や作成に時間がかかる場合に遺産分割協議書を作成しなくても(相続人全員から署名と実印の押印をしてもらわなくても)、遺言書の内容に沿って、亡くなった方の財産をもらったり、使ったりできる。

遺言執行者とは何か?

遺言執行者とは、遺言書の内容を実行する人のことです。
遺言執行者を決めておくことで、相続人全員の同意を得ずに、遺言書の内容を実行(遺産を分割)することができます。

遺言書はどのようなものがあるのか?

公正証書遺言

公正証書遺言とは、公証役場で、公証人と証人2人同席のもと作成する遺言書です。

(公正証書遺言書のメリット)


1.無効になりにくい
公証人が関与して作成するため間違いが起こりにくいです。

2.偽造・紛失のリスクがない
公証役場で原本を保管してもらえます。再発行も可能です。

3.外出するのが大変でも作成できる
公証人に自宅や病院に出向いてもらえます。

4.文字を書けなくても作成できる
署名ができない場合でも、公証人が代わりに署名することができます。

(公正証書遺言のデメリット)


1.費用がかかる
下の表は、公証役場が定めている料金の一覧です。
作成費用は誰にいくら分の財産を渡すかによって決まります。
例えば、妻に4000万円、子に1500万円の財産を渡す遺言を作成する場合、29000円+23000円で52000円となります。
財産額
100万円以下
5000円
100万円を超え200万円以下
7000円
200万円を超え500万円以下
11000円
500万円を超え1000万円以下
17000円
1000万円を超え3000万円以下
23000円
3000万円を超え5000万円以下
29000円
5000万円を超え1億円以下
43000円
1億円を超え3億円以下
5000万円ごとに13000円加算
3億円を超え10億円以下
5000万円ごとに11000円加算
※財産額が1億円以下の場合、上記の金額にさらに11000円が加算されます。(「遺言加算」といいます。)
他にも紙代や状況に応じた手数料がかかります。
2.手間と時間がかかる
→作成方法は、「遺言書はどのように作成するのか?」へ

3.証人が2人必要

自筆証書遺言

自筆証書遺言とは、遺言者が遺言書の本文を自署して作成する遺言書です。

(自筆証書遺言のメリット)


1.作成に手間がかからない

2.費用がかからない

3.法務局で預かってもらえる
法務局で預かってもらえる「遺言書保管制度」があります。
遺言書保管制度を使うと、下記のデメリットを回避することができます。

(自筆証書遺言のデメリット)


1.無効になりやすい

2. 偽造・隠蔽・紛失のリスクがある

3.検認手続きが必要
検認とは、遺言書の内容を家庭裁判所に確認してもらう手続きのことです。

以上のことを考慮すると、遺言書を作成する場合、公正証書遺言を作成するのがおすすめです。
また、自筆証書遺言を作成する場合、法務局へ預ける 遺言書保管制度を利用するのがおすすめです。

遺言書はどのように作成するのか?

公正証書遺言の作成方法

■公証人への相談・依頼

■財産状況のメモや必要書類の提出
財産や遺言内容のメモ、遺言者と推定相続人の戸籍、財産を受取る人の住民票、遺言者の印鑑登録証明書、本人確認書類、不動産の評価額証明書・登記簿等が必要になります。

■公正証書遺言の案の作成と修正
メモをもとに公証役場から公正証書遺言の案が届きます。
修正したい箇所がある場合は公証人に修正してもらいます。

■公正証書遺言作成の日時の打ち合わせ
案が確定したら、公証役場に行く日時、または公証人に自宅や病院に来てもらう日時を打ち合わせします。

■公証役場へ行く、または公証人に来てもらう
作成日当日は、公証人が遺言書の内容を読み上げて確認します。内容に間違いがないことを確認したうえで、遺言者、証人2人と公証人が署名、押印をします。

*公正証書遺言の例は下記のようになります。

自筆証書遺言の作成方法

1.遺言書本文を自署する
自署でない場合は無効になります。

2.日付を記載する
日付のないものは無効になります。

3.署名をする
自署でない場合は無効になります。

4.捺印する
認印も可能ですが、実印の方が望ましいです。

5.遺言書保管制度
法務局に遺言者本人が遺言書保管の申請をします。
手数料は遺言書1通あたり3,900円です。

私たちが今からできることは何か?

相続財産の整理

相続手続きを簡単に進めるためには、相続財産を明確にすることと、相続財産をなるべくまとめておくことが大事です。
例えば、自分の財産が何かをまとめたり、伝えておいたり、使っていない預貯金口座を生前に解約しておいたりすることで、相続人の負担を軽くできます。

遺言書の作成

前述の通り、遺言書を作成しておくことで、自分の財産を渡す相手、渡す種類、渡す割合をあらかじめ決めることができます。
また、遺言執行者を決めておくことで、相続人の同意なしにその内容を実行することができます。
現在は相続人がはっきりしていて、相続人全員の同意を得ることも簡単、遺言書は必要ないと考えている方もいるかもしれませが、相続人は変化しますし、相続人との関係もこれから変化するかもしれません。
そのような事態に備えて、私たちが今からできることを考え、行動しておくことが重要です。